FAQを作ろうと思っても、最初の質問リストがなかなか出てこないことがあります。
「同じ質問に何度も答えているから、まとめたい」。
そこまでは分かっているのに、いざ作ると手が止まるんですよね。
僕なら、AIに回答を確定させる使い方はしません。
頼むのは、よくある質問の洗い出し、分類、回答文のたたき台までです。
まず結論:AIには「整理」と「下書き」まで頼む
FAQ作りでAIに任せやすいのは、回答の正しさを確定することではありません。
AIに全部任せるのは、さすがに怖いです。
任せやすいのは、次のような作業です。
- よくある質問の候補を洗い出す
- 質問をカテゴリ別に分ける
- 回答文のたたき台を作る
- 人が確認すべきポイントを並べる
- 似た質問をまとめ、探しやすい形にする
逆に、AIに任せないほうがよいのは、個別案件への回答、制度要件の断定、必要書類の確定、期限や可否判断です。
FAQは「たくさん載せるほど親切」ではありません。
質問が多すぎると、読者は探すだけで疲れます。
読者が迷わず読める量に絞り、詳しい判断が必要な部分は相談時に確認する。
この線引きが大切です。
既存記事との違い
士業向けのAI活用記事は、すでにいくつか役割が分かれています。
| 記事 | 扱うこと |
|---|---|
| 顧客情報をAIに入れない基本ルール | 顧客情報・個人情報・秘密情報をそのまま入れないための基本 |
| 面談メモ整理 | 面談後のメモを整理し、次の確認事項を見やすくする |
| 顧客メール返信下書き | 返信文の下書きを作る。ただし個別判断は人が確認する |
| 専門用語の言い換え | 難しい説明を、顧客に伝わる表現へ言い換える |
| 初回相談前のヒアリング項目 | 相談前に聞くことを、聞きすぎない量に整理する |
この記事で扱うのは、事務所サイトや問い合わせ対応で使う「よくある質問」の整理です。
メール1通への返信ではなく、何度も使い回せるFAQ案を作るのが目的です。
ただし、公開前には必ず人が読み、専門判断に見える部分を削る前提で進めます。
職種別に、FAQで扱いやすい範囲
同じ士業でも、FAQにしやすい内容は少しずつ違います。AIに頼む前に、「どこまでなら一般的な案内として扱えるか」を分けておくと安全です。
| 職種 | FAQにしやすいテーマ | AIに作らせてよい範囲 | 人が必ず確認すること |
|---|---|---|---|
| 社労士 | 相談前の流れ、必要な準備の考え方、問い合わせ時に伝えるとよい情報 | よくある質問候補、カテゴリ分け、回答文のたたき台 | 労務判断、制度説明、個別事情への回答に見えないか |
| 司法書士 | 相続・登記相談の流れ、相談時に整理しておくとよいこと | 相談前FAQの候補、専門用語を避けた説明案 | 登記可否、必要書類の確定、権利関係の判断に見えないか |
| 行政書士 | 許認可相談の進め方、初回相談で確認する概要 | 問い合わせ前に見てもらうFAQ案、カテゴリ整理 | 許認可可否、要件充足判断、期限の断定に見えないか |
| 税理士 | 確定申告・顧問相談の流れ、相談前に整理するとよい情報 | 一般的な相談前FAQ案、質問の重複整理 | 税務判断、節税判断、具体的な申告可否に見えないか |
ポイントは、AIに「回答を確定してもらう」のではなく、「人が直しやすい下書きにしてもらう」ことです。
ここだけ人が見る前提なら、だいぶ使いやすくなります。
AIへのお願い文の例
まずは実在の顧客情報を入れず、架空の事務所サイトを想定して試します。
[ ] の中だけ変えれば使える形にしています。
あなたは士業事務所のWebサイトに載せるFAQ案を整理する補助役です。
以下の条件で、よくある質問の候補と回答文のたたき台を作ってください。
【事務所の種類】
[社労士事務所 / 司法書士事務所 / 行政書士事務所 / 税理士事務所]
【FAQを使う場所】
[事務所サイト / 問い合わせ前の案内 / 初回相談前の案内]
【読者】
[初めて相談する個人 / 事業者 / 会社担当者]
【扱いたい相談分野】
[例:労務相談、相続相談、許認可相談、確定申告相談]
【AIに作ってほしいもの】
- よくある質問の候補
- 質問のカテゴリ分け
- 回答文のたたき台
- 人が確認すべきポイント
【重要な条件】
- FAQは増やしすぎず、カテゴリごとに3〜5問程度に絞る
- 回答は一般的な案内の下書きに留める
- 個別案件への回答にしない
- 法律判断、税務判断、労務判断、登記判断、許認可判断はしない
- 必要書類、期限、可否判断を断定しない
- 専門用語をできるだけ減らす
- 読者が探しやすい順番に並べる
- 公開前に人が確認する前提で書く
このお願い文では、AIに「専門家として回答して」と頼んでいません。
FAQ候補を整理する補助役として使うのが安全です。
AI出力例
たとえば、社労士事務所の問い合わせ前FAQを想定すると、AIからは次のような下書きが返ってくるイメージです。
カテゴリ:相談前によくある質問
Q1. 初回相談では、どのようなことを話せばよいですか?
A. まずは、現在困っていること、いつ頃から起きていることか、関係する人数や状況を分かる範囲でお聞かせください。詳しい判断が必要な内容は、相談時に確認します。
Q2. 事前に何を準備すればよいですか?
A. 相談内容の概要や、確認したいことを簡単にメモしておくと話しやすくなります。個別の資料が必要かどうかは、相談内容を確認したうえでご案内します。
Q3. 相談内容がまとまっていなくても問い合わせできますか?
A. はい。最初から内容が整理されていなくても問題ありません。分かる範囲で状況をお知らせいただければ、相談時に一緒に確認します。
人が確認するポイント:
- 回答が労務判断に見えないか
- 必要書類や期限を断定していないか
- 問い合わせ前の読者にとって、質問数が多すぎないか
このまま公開するのではなく、事務所の方針や実際の相談導線に合わせて人が直します。
AIの文章は整って見えるので、ここは少し慎重に見ます。
職種別に変えるなら、次のように方向性を変えます。
| 職種 | FAQ候補の方向性 | 回答で避けること |
|---|---|---|
| 司法書士 | 相続・登記相談で、初回相談前に整理しておくと話しやすいこと | 登記可否や必要書類を確定する表現 |
| 行政書士 | 許認可相談で、業種や希望時期など概要を伝えてもらう案内 | 許認可の可否や要件充足を断定する表現 |
| 税理士 | 確定申告・顧問相談で、相談したい範囲を整理する案内 | 税務判断や節税判断に見える表現 |
社労士向けの例をそのまま使い回すのではありません。
各職種のリスクに合わせて「何を言わないか」を変えるのが大事です。
そのまま公開しないための確認
AIが作ったFAQ案は、見た目が整っていても、そのまま公開しないほうがよいです。
特に、回答文が「それは可能です」「この書類が必要です」「期限はいつです」と言い切っている場合は、止めて見ます。
本文の読みやすさとは別に、専門判断に見える表現を人が削る必要があります。
確認するときは、次の表を使うと見落としを減らせます。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| FAQが多すぎないか | 似た質問をまとめ、カテゴリごとに探しやすい量に絞る |
| 個別案件への回答に見えないか | 「あなたの場合は」「必ず」「可能です」と言い切りすぎていないか |
| 専門判断に踏み込んでいないか | 法律、税務、労務、登記、許認可の判断をしていないか |
| 必要書類や期限を断定していないか | 相談内容によって変わる部分を固定していないか |
| 顧客情報を入れていないか | 実名、会社名、具体案件、秘密情報をAIに入れていないか |
| 読者が探しやすいか | 事務所側の都合ではなく、読者の疑問の順番になっているか |
FAQを増やしすぎない
FAQを作り始めると、あれもこれも載せたくなります。
僕も整理していると、つい増やしたくなります。
でも、初めて相談する人にとっては、質問が多すぎるページも負担になります。
最初は、次の3カテゴリくらいに絞ると始めやすいです。
- 相談前によくある質問
- 初回相談の流れ
- 相談後に確認すること
細かい制度説明や判断が必要な内容は、FAQで完結させようとせず、相談時に確認する形にします。
今日できる小さな一歩
まずは、公開ページに載せる前提ではなく、事務所内の下書きとして試してください。
おすすめは、実名や具体案件を入れずに、架空の相談分野を1つ決めることです。
たとえば「初めて労務相談をする会社担当者向け」「相続相談を検討している人向け」「許認可相談を考えている事業者向け」のように、1つだけ選びます。
そのうえで、AIにFAQ候補を10個ほど出してもらい、人が3〜5個に絞ります。
まずはそのくらいで十分です。
注意点
FAQ作りでAIを使うときは、次の点を守ってください。
- 顧客情報、個人情報、秘密情報をそのまま入れない
- AIの回答をそのまま公開しない
- 制度要件、必要書類、期限、可否判断をAIだけで確定しない
- 専門判断に見える回答は、人が削るか相談導線へ回す
- AIサービスの料金、プラン、保存条件、データ利用条件は、本文内で断定しない
AIは、FAQを作る専門家ではなく、整理を手伝う道具です。
事務所側が伝えたいことと、読者が知りたいことは、少しずれることがあります。
そのずれを見つけるためにAIを使い、最後は人が「これは読者にとって分かりやすいか」を確認します。
まずはここだけで十分です
士業事務所のFAQ作りでは、AIに回答を確定させるのではありません。
質問候補の洗い出し、分類、回答文のたたき台、人が確認するポイントの整理に使うのが現実的です。
FAQは多ければよいわけではありません。
読者が探しやすい量に絞り、専門判断が必要な部分は相談時に確認する形へ逃がします。
まずは架空の相談分野で、AIへのお願い文を1回試す。
出てきたFAQ案を3〜5問に絞るだけでも、事務所サイトや問い合わせ対応の見直しに使える材料になります。