マスキングって、正直クソ面倒です。

顧客名、会社名、住所、金額、相談内容。

AIに貼る前にどこまで消せばいいのか、普通に迷います。

でも、ここを雑にすると普通に事故ります。

この記事は、「怖いから使わない」を「ここまでなら試せる」に変えるための実務ハブです。

AIには専門判断ではなく、返信文のたたき台、確認事項、次に人が見るポイントを作らせます。

マスキングは、リスクを消す魔法ではありません。

AIに入れられる範囲を作り、文章整理や壁打ちをしやすくするための下準備です。

まず結論: 顧客情報を入れなくても試せる

最初から実案件をAIに入れる必要はありません。

僕なら、まず顧客情報を含まない練習用メモから試します。

士業事務所で最初に試すなら、次のような「判断ではなく整理」の作業が現実的です。

  1. 一般的な問い合わせ返信のたたき台を作る
  2. 面談メモを「要点」「確認事項」「次にやること」に分ける
  3. 初回相談の流れや持ち物案内のFAQ案を作る

この段階で見るのは、AIが正しい結論を出せるかではありません。

文章をゼロから考えなくてよくなるか、人が見直しやすい形になるかです。

顧客情報をそのまま入れず、一般化してAIに整理を頼むBefore After図

これだけ覚えるやること
そのまま入れない顧客名、社名、住所、番号、詳しい相談内容を避ける
置き換える【甲社】【A氏】【〇月頃】のように一般化する
AIに頼む下書き、要点整理、確認リスト化に絞る
人が確認する最終判断と顧客への送信は人が行う

今日試すなら、実案件ではなく、この記事内の「AIへのお願い文の例」と、一般化した相談内容を使ってください。

AIに頼むと何が楽になるか

AIを使う価値は、専門判断を代わりにさせることではありません。

士業事務所で使いやすいのは、人が確認する前の「整える作業」です。

たとえば、次のような負担を軽くできます。

よくある状態AIで補助しやすいこと人が確認すること
問い合わせメールの返し方を毎回考える丁寧な返信文のたたき台を作る制度説明、期限、必要書類、事務所方針と合うか
面談メモに話題が混ざっている要点、確認事項、次の作業に分ける抜け漏れ、事実関係、専門判断が必要な箇所
顧客向け文面が硬いやわらかい表現に整える正確性、誤解を招く表現がないか

ここで大事なのは、AIに渡す前に情報を分けることです。

案件を特定しそうな情報を薄め、整理に必要な範囲だけを渡します。

無料版・個人向け有料版・法人向け・APIで何を見るか

ChatGPT、Claude、Gemini、Microsoft Copilot などの生成AIは、無料で試せるものもあります。

ただし、現場で迷うのは「どれが高性能か」よりも、「この使い方で顧客情報を入れてよいのか」「スタッフ全員で同じルールにできるのか」です。

具体的な設定画面や名称は、ツール側の更新で変わることがあります。この記事では、まず士業事務所で確認したい観点を整理します。実際の設定変更は、各社の公式情報を確認しながら行ってください。

どのAIツールでも、まず見るのは次の4つです。

確認観点見ること
データ利用入力内容がモデル改善や学習に使われる可能性
履歴・保存チャット履歴、一時チャット、ログ、添付ファイルの扱い
管理個人向け有料版、法人向けプラン、APIでの管理者設定や権限
事務所ルール入力してよい情報、入れない情報、送信前確認の線引き

料金、機能、データ利用の扱いは変更されることがあります。

実際に使う前に、各サービスの公式ページ、規約、管理画面の設定を確認してください。事務所のルールや守秘義務の扱いも、あわせて見ておくと安心です。

利用形態現場で確認したいこと士業事務所での見方避けたい思い込み
無料版学習・改善利用、履歴、ファイルアップロード、設定変更の有無試しやすいが、顧客情報や案件情報を入れる前提にはしない無料だから気軽に何でも入れてよい
個人向け有料版無料版との違い、履歴設定、データ利用設定、アカウントごとの設定文章整理には使いやすくても、事務所全体の管理とは別に考える有料版なら設定確認なしで使える
法人向けプラン管理者設定、権限管理、組織データの扱い、スタッフ利用の統制事務所で使うなら候補になるが、入力ルールと人の確認は別に必要法人向けなら何を入れてもよい
API・外部サービス経由API提供元と組み込み先サービスの規約、ログ、保存、再利用の扱い業務システム内のAIでも、提供事業者の扱いを確認するAPIなら自動的に安全側になる

「無料版は危険」「有料版なら安全」と単純に分けません。

事務所として何を入力しないか、誰が確認するかを先に決めます。

「マスキングしたつもり」でも危ない失敗パターン

マスキングというと、まず顧客名や社名を消すことを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、名前を消すことは大切です。

ただ、実務では「名前は消したけれど、他の情報の組み合わせで分かってしまう」ことがあります。

以下は、実在する事故例としてではなく、士業事務所で注意したい失敗パターンとして整理したものです。

注意したいパターン何が危ないか入力前にどう直すか
名前だけ消して、地域・年齢・業種・家族構成・金額が残る複数の情報を組み合わせると、名前がなくても特定につながる可能性がある地域を広げる、年齢を年代にする、金額を丸める、不要な事情は削る
会社名だけ消して、担当者名・役職・従業員数・業種が残る企業や担当者を推測できる情報が残ることがある役職や規模を一般化し、業務に不要な情報は削除する
PDF / Excel / 画像をそのままアップロードする本文だけでなく、氏名・社名・住所・番号・印影・署名などが含まれることがあるアップロード前に中身を確認し、必要な部分だけを一般化して入力する
ファイル名に顧客名や案件名が残る本文を消しても、ファイル名から情報が伝わることがあるファイル名を一般的な名称に変える。不要ならファイルを使わず要点だけ入力する
オプトアウト設定をしたつもりで別アカウントでは未設定スタッフ、端末、アカウントごとに設定が違う可能性がある利用する全員が、自分のアカウントで設定を確認する
法人向けプランだから全部大丈夫と思い込む学習利用されないことと、入力ミスや情報漏えいリスクがないことは別入力ルール、添付ファイル確認、出力確認の運用を残す
AI出力をそのまま顧客へ送る内容が自然でも、制度・手続き・判断が誤っている可能性がある顧客へ送る前に、担当者が制度・表現・事実関係を確認する

ここでの逃げ道は、「いきなり実案件を入れない」ことです。

まずは【甲社】【A氏】【〇月頃】【おおよその金額】のように一般化し、AIには返信文のたたき台や確認リストだけを作らせます。

マスキングは「安全保証」ではありません。

AIに入れる情報の範囲を作り、文章整理や壁打ちをしやすくするための基本動作です。

AIに入れる前のマスキング手順

難しく考えすぎる必要はありません。

AIに頼む作業を絞り、不要な情報を入れないことが出発点です。

顧客情報をそのまま入力せず、置き換えてからAIに頼み、人が確認する4ステップ

手順避けること代わりにやること
1. 目的を絞る相談内容を丸ごと入れる「返信文のたたき台」「確認事項の整理」だけ頼む
2. 固有名詞を外す個人名、社名、住所、連絡先、番号類を残す【甲社】【A氏】【地域】のように置き換える
3. 特定される情報を薄める年齢、地域、金額、日付、役職を細かく残す○代、〇月頃、おおよその金額にする
4. ファイルを確認するPDF、Excel、画像をそのまま入れる必要な要点だけ人が抜き出す
5. 制約を書くAIに結論まで任せる専門判断は断定しない、確認事項を分けると書く
6. 出力を見るそのまま顧客へ送る担当者が制度・表現・事実関係を確認する

迷ったら、情報を置き換えるより削る方が扱いやすい場合があります。

最初の壁打ちは、実案件ではなく、一般化した練習用メモから始めてください。

AIに入れる前のチェックリスト

次の表は、AIに入力する前の確認漏れを減らすためのチェックリストです。

確認項目確認の目安迷ったときの逃げ道
顧客名・社名個人名、会社名、屋号、担当者名が残っていない【甲社】【A氏】のような仮名に置き換える
住所・連絡先住所、電話番号、メールアドレスが残っていない地域情報が不要なら削る。必要でも大まかな地域にする
日付・金額正確な日付や金額を入れる必要があるか確認した「〇月頃」「おおよその金額」のように薄める
地域・属性情報地域、年齢、業種、家族構成、役職などの組み合わせで特定されにくい組み合わせで分かりそうなら、さらに一般化する
添付ファイルPDF、Excel、画像、スクリーンショットの中身とファイル名を確認したファイルではなく、必要な要点だけ人が抜き出す
学習利用設定データ利用設定、履歴設定、オプトアウトの有無を確認した公式情報と管理画面で確認する
AIに頼む作業下書き、整理、表現調整、チェック補助に限定している判断・結論が必要な作業は人が行う
出力の使い道顧客へ送る前に人が確認する運用になっているまず社内メモや下書きとしてだけ使う

このチェックリストは、事務所内で1枚にまとめておくと使いやすくなります。

最初から全員で完璧に運用しようとすると、たぶん疲れます。

そのまま使えるAIへのお願い文の例

「プロンプト」とは、AIに出す指示文のことです。

ここでは、読者向けに「AIへのお願い文」と呼びます。

難しく考えすぎず、「この材料を、この形に整理してください」とお願いする文章だと思えば十分です。

以下は、顧客返信文のたたき台を作るためのテンプレートです。

[ ] の中だけを、自分の事務所で使う一般化済みの内容に置き換えてください。

実在の会社名、個人名、住所、金額、案件名は入れません。

下の枠内をコピーして、AIに貼り付けて使います。

あなたは、士業事務所の業務を補助するAIです。
以下の[相談内容]をもとに、顧客へ返信するメールのたたき台を作成してください。

前提:
- 個人名、会社名、住所、連絡先、番号類は入れていません
- 下記の[相談内容]は、一般化した表現のまま扱ってください
- AIの出力はそのまま送らず、担当者が必ず確認します

条件:
- 専門判断は断定しない
- 不明点は「確認が必要なこと」に分ける
- 返信文は丁寧だが、硬すぎない表現にする
- 具体的な期限、提出先、必要書類名、制度判断は書かない
- 最後に、担当者が確認すべき点を箇条書きで出す

[相談内容]
[例: 甲社から、従業員A氏の手続きについて相談を受けた。現在分かっている条件は一部だけで、必要な情報が不足している。顧客には、まず追加確認が必要な点と今後の流れを案内したい。]

出力形式:
1. 件名案
2. 返信本文案
3. 確認が必要なこと
4. 担当者が最後に見るポイント
5. 追加で確認したい情報

このお願い文では、AIに結論を出させていません。

一般化した相談内容をもとに、返信文のたたき台、確認が必要なこと、担当者が最後に見るポイントを分けてもらうだけです。

AI出力例

上のお願い文を入れると、たとえば次のような整理案が返ってくるイメージです。実在の案件ではなく、一般化した問い合わせとして書いています。

AIから返ってくる返信文の下書き例

1. 件名案

お手続きに関する追加確認のお願い

2. 返信本文案

お問い合わせいただきありがとうございます。

いただいた内容について、今後の流れを確認するため、いくつか追加で確認したい点があります。現時点では詳細な条件を確認できていないため、具体的な手続き内容や必要書類については、担当者が内容を確認したうえでご案内いたします。

まずは、現在分かっている範囲で、手続きの目的、希望される時期、関係する資料の有無をお知らせください。必要に応じて、面談または担当者からの確認連絡をご案内いたします。

なお、このメールでは一般的な確認事項のご案内に留めています。個別の判断が必要な内容については、追加情報を確認したうえで担当者からご連絡いたします。

3. 確認が必要なこと

  • 相談内容の目的と、顧客が希望している対応範囲。
  • 現在分かっている条件と、不足している情報。
  • 関係しそうな資料が手元にあるか。
  • 面談で確認した方がよい内容が含まれているか。

4. 担当者が最後に見るポイント

  • 事務所で扱える業務範囲の案内として適切か。
  • 専門判断に見える断定表現が入っていないか。
  • 確認前の期限、提出先、必要書類名を書いていないか。
  • 顧客に追加で確認すべき点が漏れていないか。
  • 事務所の通常案内や担当者の方針と表現が合っているか。

5. 追加で確認したい情報

  • 手続きの目的と、顧客が希望している時期。
  • 現在手元にある資料の種類。
  • まだ確認できていない関係者、日付、前提条件。
  • 返信だけで足りるか、面談や担当者確認へつなぐべきか。

この出力例でも、AIは「正解」を出していません。

返信文のたたき台と見直しポイントを分けることで、担当者が確認しやすくしています。

少し置き換える手間はあります。

面倒です。ここは面倒なんですが、やった方がいいです。

ゼロから返信文を考えるより、確認すべき点が見えやすくなります。

ほかに使いやすいAIへのお願い文

問い合わせ返信以外なら、次の2つから試しやすいです。

いずれも、一般化した内容や社内練習用のメモから始めます。

使い道AIへのお願い文の型
面談メモの整理個人名・社名・住所・連絡先・番号類を入れていないメモです。専門判断はせず、「要点」「確認事項」「次に行う作業」「人が判断・確認すること」に分けてください。
入力前のマスキングチェックAIに入力する前の文章です。顧客名、社名、個人名、住所、連絡先、番号類、案件を特定しそうな情報が残っていないか、一般的な観点で確認してください。

士業団体や公的機関の情報も確認対象にする

生成AIの利用では、各ツールの設定だけでなく、公的機関や士業団体の情報も確認対象になります。

確認するもの見るポイント
公的機関の公開情報個人情報やAI利用に関する一般的な注意点
士業団体の案内所属分野で求められる守秘義務や利用上の注意
AIサービスの規約データ利用、保存、履歴、添付ファイルの扱い
事務所内ルール入力してよい情報、保存方法、送信前確認の担当

ここでは詳細な法的解説はしません。

実際にAIを使う前に、公式情報・一次情報の最新状況と、所属する士業団体や事務所内ルールを確認してください。

今日できる小さな一歩

今日やることは、実案件をAIに入れることではありません。

まずは、この記事の「AIへのお願い文の例」を使い、一般化した問い合わせ内容で返信文のたたき台を作ってみてください。

返ってきた出力を見ながら、次の3つだけ確認します。

  1. 返信文のたたき台として使えそうか
  2. 担当者が確認することが分かれているか
  3. そのまま送ってはいけない表現が見つけやすいか

良さそうなら、次は実在情報を含まない社内練習用のメモや、一般的なFAQ案で試します。

まずは顧客情報を入れない使い方からで十分です

士業事務所でAIを使うなら、いきなり個別案件の相談内容を入れるのではなく、顧客情報を含まない文面作成から始めるのが現実的です。

無料版・個人有料版・法人向け・APIでは、データ利用や管理機能の確認ポイントが違います。

ただし、どのプランでも「このツールなら安全」と言い切らず、何を入力しないか、誰が確認するか、どの作業に使うかを決めます。

今日まずやるなら、事務所内で次の3つだけ決めるところからで十分です。

  1. 顧客名・社名・番号類・相談内容の詳細はそのまま入れない
  2. AIには下書き・整理・表現調整を頼む
  3. 顧客へ送る前に必ず人が確認する

詳細なAIツール比較や、社労士・司法書士・行政書士・税理士などの士業別活用例は、別記事で詳しく整理します。